祖父の記憶

ふと、古い記憶を思い出した。まだ小学校にもあがっていないころ、母の実家に行った時の話。

夜ごはんを食べ終えて、みんなでテレビを見ていた。母、伯父、祖父、祖母で。チャンネルを回して変えるような古いテレビで放送を見ていた。

すると、祖父がどこからかカセットテープを持ってきた。それを再生機にかけようとしたんだが、なぜだか再生できなかった。祖父はどうしたら再生できるのかわからなかったのか、それともそのカセットを処分するつもりだったのか、よくわからないが黒いテープをぐーっと引き出してしまった。たくさん引き出して、黒いテープが床でぐじゃぐじゃにとぐろをまいていた。

それを見た伯父は祖父を怒鳴った。「なにしてるんだ!やめろ!」って。怒鳴られた祖父はシュンと寂しそうな、哀しそうな顔をしていた。

私はいつも優しい伯父が怒鳴ったことにびっくりしたし、祖父の哀しそうな顔を見て自分も哀しくなった、

なぜか時折思い出す、この記憶。今では、母の実家もこの記憶の頃からはずいぶんと変わってしまった。今は伯父がひとりでその家に住んでいる。以前よりも散らかった。祖父も祖母ももう何年も前に逝ってしまった。祖父が逝ったのは私が小学生の頃だし一緒に住んではいなかったのだから、もうずいぶんと記憶が薄い。でもなぜかこの記憶は何年も忘れていたのにふとした瞬間にパッと思い出す不思議なものだ。祖父の表情もはっきりと覚えている。多分伯父や母にこの話をしてもきっと覚えていないだろうと思う。大人ってそういうものだ。子供ってこういうものだ。多分私は死ぬまでこの出来事を忘れないのかな、と思う。