【読了】センセイの鞄

言葉ひとつひとつがあたたかくおだやかで綺麗な日本語を使う小説だな、と感動した。

この小説を読んでいる間は忙しい日常のことを忘れていられた。癒された。

とてもいい作品。 またいつか、日常に疲れたら読み返したい作品。

本書では、日常を静かに淡々と過ごしていた2人がゆっくりと近づき、季節の移り変わりとともに、互いの関係を育んでいく大人の恋愛を描いている。

川上弘美といえば、生き物とモノ、時間と空間などさまざまなものの境目が溶け、混じり合うような、エロチックで不思議な世界を描いた作品が特徴的だ。

本書では、日常を静かに淡々と過ごしていた2人がゆっくりと近づき、季節の移り変わりとともに、互いの関係を育んでいく大人の恋愛を描いている。恋愛といっても、勢いにまかせた情熱のそれとは違う。穏やかな情愛というほうが、しっくりくるような愛だ。あのどろりとした「川上ワールド」を期待する読者はちょっともの足りなさを覚えるかもしれない。

およそ恋愛とは結びつかないはずの2人――

38歳のツキコさんと70代のセンセイは、近所の駅前の一杯飲み屋で居合わせて以来の仲だ。お互い1人で酒を飲み、さかなの好みがよく似ている。 「『女のくせに手酌ですかキミは』センセイが叱る。『古いですねセンセイは』と口答えすると、『古くて結構毛だらけ』とつぶやきながらセンセイも自分の茶碗いっぱいに酒を注いだ」憎まれ口をたたき合いながら、2人は共に過ごすようになる。

センセイの鞄
公開日: 2014.01.24 ・ 更新日: 2018.05.05